2024年12月某日、長年にわたり登山用品やアウトドア用品の販売を手がけてきた株式会社山渓(以下、山渓)が事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったというニュースが駆け巡りました。
多くの登山愛好家にとって、山渓は単なる道具を販売する場所ではなく、山への情熱や知識が集まる、いわばコミュニティのような存在でした。
突然の報せに、驚きと寂しさを覚えた方も少なくないでしょう。
山渓は、創業から70年以上の歴史を持つ老舗のアウトドアショップです。
登山用品の専門知識を持つスタッフによる丁寧なアドバイスや、他では手に入らないオリジナル商品の開発など、独自の強みを持っていました。特に、NANGA(ナンガ)とのコラボレーションによって生まれたシュラフ「山渓×NANGA オーロラ600DX」は、その高い品質とコストパフォーマンスから、多くの登山者にとって憧れの逸品でした。

高品質とコストパフォーマンスの両立。「山渓×NANGA オーロラ600DX」の魅力
NANGAは、国内生産にこだわり、高品質なシュラフやダウンウェアを手がける滋賀県のメーカーです。特に、防水透湿性に優れたオーロラテックス®︎素材を使用したシュラフは、 絶大な信頼を得ています。
「山渓×NANGA オーロラ600DX」は、NANGAの技術力と山渓の長年の経験と知識が融合して誕生しました。
600gという保温力を持つ高品質なダウンを使用しながらも、比較的手頃な価格を実現したことで、幅広い層の登山者に支持されました。
その魅力は、単に暖かいだけでなく、以下の点にありました。
- オーロラテックス®︎による高い防水透湿性: 雨や結露によるダウンの濡れを防ぎ、保温力の低下を最小限に抑えます。日本の湿度の高い山岳環境では、この機能が非常に重要となります。
- 高品質なダウン: 600gのダウンは、春から秋の3シーズンはもちろん、冬の低山や寒い季節のキャンプにも対応できる保温力を備えています。
- 軽量コンパクト: 保温力と相反する要素である軽量性とコンパクトさを高いレベルで両立しています。登山において、荷物の軽量化は重要な課題であり、オーロラ600DXはその点で多くの登山者を助けてきました。
- 山渓ならではのカラーリングと細部の仕様: 山渓が独自にセレクトしたカラーリングや、使いやすさを考慮した細部の仕様も魅力の一つでした。他のシュラフにはない、落ち着いた色合いや、出し入れしやすい収納袋などが、多くの登山者に選ばれる理由となっていました。
- コストパフォーマンス: 高品質な素材と国内生産でありながら、 お求めやすい価格設定も大きな魅力でした。初めて本格的なシュラフを購入する人から、 ベテラン登山者まで、幅広い層に支持されました。

登山者の思い出と共に
「山渓×NANGA オーロラ600DX」は、多くの登山者の山行を支えてきました。
初めてのテント泊、寒い山頂でのご来光待ち、長期間の縦走…様々なシーンで、 シュラフは暖かさと安心感を提供してきたことでしょう。
使い込むほどに体に馴染んでいきます。
それは単なる道具ではなく、かけがえのない相棒のような存在だったかもしれません。
山渓の倒産というニュースは、 大切な道具との出会いの場が失われてしまったことを意味します。
もちろん、NANGAの製品は今後も様々なところで購入できますが、「山渓×NANGA」という特別なコラボレーションモデルが登場する可能性は低いでしょう。
失われたもの、そして残されたもの
山渓の倒産は 悲しい出来事ですが、アウトドア業界全体の 革新の歩みが止まるわけではありません。
今後も、新たな ショップやメーカーが、 高品質な商品と サービスを提供し、登山者の安全で快適な旅をサポートしてくれることを願っています。
そして、「山渓×NANGA オーロラ600DX」は、今も多くの登山者の手元で大切に使われていることでしょう。
たとえ山渓という ショップはなくなってしまっても、このシュラフと共に過ごした山での思い出は、色褪せることなく 登山者たちの心に残ります。
